お腹を合わせて音を鳴らし、客席を笑わせる。ゆんぼだんぷの音ネタは、日本を飛び出して海外の舞台へ届いた。
けれど、音ならどこでも同じように伝わる、とは限らない。
藤原大輔とカシューナッツが語った、海外の舞台に挑んでいた頃の話。ネタを作る時も、舞台に立つ時も、ふたりを待っていたのは予想外の出来事だった。
話:ゆんぼだんぷ/構成:お笑いTV編集部
ハイタッチをしようとしたら
もともと、ふたりは大阪で漫才やコントをしていた。約9年間、なかなか結果が出なかった。仕事も少なく、この先どうしようかと悩んでいたという。
テレビに出るための強みが欲しい。東京で挑戦するなら、そのきっかけになるネタが必要だ。
そんな頃、マネージャーと3人でサウナに行った。
「来月の仕事が決まったぞ」
久しぶりの仕事に喜び、ふたりがハイタッチをしようとすると、手より先にお腹がぶつかった。
「チョンッ」
思いがけない音が鳴った。
汗でお腹が濡れていた。しかも、服を着ていない。横にいた知らない男性まで、その音を聞いてちょっと笑っていたという。
これをネタにできるのではないか。
タイトルを付けて生まれたのが、「まるで鏡のような水面に雨のしずくが一滴落ちる音」だった。
初めてライブで披露した時、客席の反応はよくなかった。けれど、楽屋に戻ると、先輩や周りの芸人たちが面白いと言ってくれた。その反応に、背中を押された。
「これ1つで東京行くか」
ふたりは、その音ネタを持って上京した。
海外で、誰と戦っているのか
音ネタでテレビに出るようになったふたりには、海外への道も開けていった。
バナナマンの設楽からは「このネタ海外でウケるよ」と言われた。『ゴット・タレント』への挑戦も、ゴンゾーの助言がきっかけだったという。
ドイツの番組では、競う相手まで予想外だった。カシューナッツは、出場者の動画を見て驚いた。
舞台に、本物の馬を連れてきた人がいる。
何をするのかと思って見ていると、音楽に合わせて、馬が「ヒヒーン」「ブルッ」と鳴く。それが、たまらなくシュールで面白かったという。
「俺たち、馬と戦ってるのか」
漫才の賞レースに出ていた頃には、考えてもみなかった相手だった。
ネタの名前にも、ひと手間ある
舞台が変われば、音の受け取られ方も変わった。
ふたりがカエルの音だと思って鳴らした音を、現地の人からは「それはアヒルの声だ」と言われる。自分たちが付けたタイトルのままでは、想像してほしい場面が伝わらないことがあった。
そこで、現地の人に確かめてから、ネタのタイトルを考えるようにしたという。
カシューナッツは、見てもらう相手に合わせることが必要だと話していた。藤原が心配していたのも、笑ってもらえるかどうかの、一歩手前だった。
「ちゃんと伝わるか・伝えられるか」
お腹で音を鳴らすネタにも、そうした準備があった。
客席が、大いに沸いた日
準備をして舞台に立っても、思いどおりにいかないことはある。
アメリカで「イルカの求愛」というネタを披露した時のことだ。このネタでは、曲を流しながら音を鳴らす。
客席の反応は、とてもよかった。拍手もすごかった。
すごすぎて、ふたりには曲が聞こえなくなった。
盛り上がっている。大いにウケている。けれど、そのせいでネタがやりづらい。
その時、藤原の頭に浮かんだのは、歌手がコンサートで耳に着けているイヤホンだった。
「あれ欲しいな」

